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太陽物理学が何の役に立つかわからなくて「科学哲学への招待」を読んだ話

読んだ本

科学哲学への招待 / 野家啓一

科学哲学への招待 (ちくま学芸文庫) | 野家啓一 | 哲学・思想 | Kindleストア | Amazon

概要

古代ギリシャアリストテレスの自然観からコペルニクスケプラーガリレオニュートンデカルトの科学革命の時代を経て科学は発展してきた。

その後、科学の方法論とともに科学哲学という学問領域が発展してきた。

代表的なものとしては、

  • ポパー反証主義 ... 推論と反駁の繰り返しを経て科学は発展していく
  • クーンのパラダイム論 ... 推論と反駁を繰り返しても真理に近づいているという保証はない
  • ローティのプラグマティズム ... 真理に辿り着けなくとも、世界の知られざる側面を描き出すことこそ探究の目標である
  • ラカトシュのリサーチ・プログラム ... 中核となる基本理論は反証不可であり、その周辺 (防御帯) の一般科学がそれらを守っている

また、現代では科学と技術、実社会が密接に結びつくことによって、科学技術における倫理が求められるようになった。

例えば、戦争への応用や気候変動などである。

感想

太陽物理学という一般的には役に立たないと言われている (失礼?) 学問を極める価値は何だろうかと、学生時代に思って読んだ。

今後、社会の役に立つ研究職を志望するなら、またその時に読む必要ああるだろう。

お気に入りは反証可能性

真に科学的な理論・仮説とは、反証されるリスクを冒して大胆な予測をするものである。

ローティのプラグマティズムもいいな。

真理の最終的な収束地点を想定する必要はなく、新しい語彙を用いて世界の知られざる側面を描き出すことこそ探究の目標なのである。

太陽物理学のようなリモートセンシングがメインの科学も、それ以外の学問にも、完璧な理論などない。

いずれも反証されうるリスクがあるからこそ学術的な価値がある。

科学に完全はない、ただ仮説提案と反証を繰り返して、少しずつ真理に近づいていく漸近的な過程に過ぎない (ただし、パラダイム論ではそれすら否定されるので辛い)。

今まで太陽物理学の仮定の多さやリモートセンシングによる曖昧さを危険視してきたが、それら自体は科学的価値があるかどうかとは関係がない。

それらを適切に用いて反証可能性のある仮説を立てることが学術的に価値のある行為だ。

社会人となった今ではなかなか科学哲学について考える機会はないが、基本的な教養として読む価値のある本だったと思う。