あなたの仕事は世の中に意味のある貢献をしていますか?
読んだ本
ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論
概要
「あなたの仕事は世の中に意味のある貢献をしていますか?」
この問いに約40%の人たちが「していない」と回答した (イギリス・オランダの世論調査)。
当人が無意味だと感じている仕事、存在理由を確信できない仕事 (ブルシット・ジョブ) はなぜ存在するのか、どのような影響があるのか、どう対策すべきかを論じる。
ブルシット・ジョブの種類
取り巻き (Flunky)
誰かを偉そうに見せたり、偉そうな気分を味わわせるというだけの仕事。
ドアマン、エレベーター添乗員、従業員数を盛るために雇っている部下など。
脅し屋 (Goon)
脅迫や欺瞞が介在するような、当人が世の中に悪い影響を与えていると感じている仕事。
商品を売るために人を欺くマーケター、誰も欲しくない商品を売りつけるコールセンター係など。
尻ぬぐい (Duct Taper)
自動化によって容易に解消可能なはずだが、多くの部下を維持したい上司の思惑、組織の構造的な混乱などによって放置されているために存在する仕事。
ただ情報をコピペして横流しするだけのような定型的な仕事。謝罪するだけの仕事など。
書類穴埋め人 (Box Ticker)
本来の目的を達成するのに無関係あるいは逆効果となる仕事。官僚主義組織や大学に多い。
活用されない書類の作成、見せかけだけの会議・委員会など。
タスクマスター (Task Master)
ただ仕事を割り当てるだけのような、必要のない上司。
または、ブルシット・ジョブを作り上げ、監督する上司。
職業のように書いているが、実際にはタスク単位の話であり、労働時間の一部をブルシット・ジョブに費やしているケースもある。
ブルシット・ジョブが当人に及ぼす影響
ほとんどやることがなく収入を得ることができるのであれば、ラッキーと考えてもいいはず。
しかし、実際には、そのような仕事に就いている人たちは自分を不幸な人間だと考える。
その原因は主に、
自分が社会から切り離されているという疎外感
自分が行為主体である感覚の欠如
自分の時間を他人に所有されている感覚
の3点である。
仕事に価値を感じられない場合、自分自身の価値をも低く評価してしまう。
なぜブルシット・ジョブが存在/増殖しているのか?
社会的・経済的次元
効率化によって職を失った人たちに対する補償がない
経済学的に「何もせず収入を得る労働者」が資本主義において存在するはずがないという認識
当人は仕事の価値を認識していないが、実際には意味があるはずという考え
自分の仕事をブルシットだと思っても口にするべきではないという圧力
文化的・政治的次元
そもそもこのような問題の存在が認知されていない
社会的価値の高い仕事ほど収入が低いという倒錯した関係性 (顧問弁護士や政策コンサルタント v.s. 小学校の先生やごみ収集に従事する人)
仕事を好きでやっている人、価値や充実感を感じている人はそれ自体が報酬となるなので、高い賃金は支払われるべきではない。逆に仕事を苦痛に感じている人は、それに対して高い報酬が支払われるべきであるというロジック
ブルシット・ジョブ問題にどう対処すべきか?
ロボットによる自動化
ユニバーサルベーシックインカム
(この本はあくまでブルシット・ジョブの問題を知ってもらうためのものであり、特定の解決策を提示するわけではない、ということであった。)
感想
入社直後に読んだ時は、ブルシット・ジョブのない世の中を作っていきたいと考えていた。
しかし今は自分自身がブルシット・ジョブに携わっているのが現実。
種別で言えば Goon や Box ticker に当てはまるだろう。少なとも自分の仕事で世の中が良くなっているという実感はない。
なまじ高収入なのがまたタチが悪い (実際の実力以上に評価されているのもまた辛い)。
まずは自分自身がこの現状から脱却しなければ。
しかし、どうすればこのような仕事がなくなるだろうか。
自動化によって自由な時間が生まれると考えていたが、それはむしろブルシット・ジョブを生み出す温床となっている。
やるなら徹底的な自動化が必要となりそうだ。
ベーシックインカムとか導入されないのかなーと思う一方で、年金すら保証されていない現実が待っているんだなー。
何気に4,000円もする本だが、具体例が多く冗長な気がするので文量も金額も半分であってほしかった。
どうせ世の中の役に立たないならもっと自分の好きなものに関わる仕事にすればよかった。